今どき漢のいなせな指輪

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わたくしが新卒で入社いたしました宝石屋は、伝統ある老舗ということで、大阪ではそこそこ名の通ったお店だったのですが、どんな会社でもそうなのかもわかりませんが、外から見るイメージと、中に入ってからの実際の企業風土とが大きくかけ離れていたのには、少なからず衝撃を受けたものでございます。

わたくしの入社当時と申しますから、今から四十年以上も昔。あー、歳いたなー、嫌んなるわ。

当時その会社には、兵庫県の東条湖の近くに会社が契約している保養所がありまして、新入社員は全員配属前にそこに集められ、一週間みっちり研修を受けるようになっていたのであります。

四十年を経た今となれば、いったいどんな内容の研修を受けたかなどさっぱり記憶にございませんが、唯一覚えているのは毎日早朝にたたき起こされ、近所の山道をジョギングさせられた事だけ。いまだに覚えてるからには、よっぽど辛かったんでしょうなー。

さてその研修の最終日、大阪から遠路はるばる、わざわざ社長がお出ましになり、わたくしども新入社員に訓示を垂れたもうという事で、一同玄関前で整列してお出迎えするようにとのお達し。

まあ、研修最終日という事もあり、ややだれ気味の新入社員どもが、不承不承並んで玄関前で社長様をお待ちしておりますと、遠目にも鮮やかなスカイブルーの大型のアメ車、リンカーンコンチネンタルが田舎道を砂煙を蹴立てて爆走してくるじゃありませんか。

当時、リンカーンと言いますと、今は無きプロ野球チーム南海ホークス、その球団のスター選手、ノムさんこと三冠王野村克也氏が、これ見よがしに球場に乗り付けていたことでも有名。それ以外にも、任侠の有力親分衆がその勢力を誇示するための有力なはったりの小道具でもあったわけであります。メルセデス・ベンツが流行る前の話ね。

えっ、まさかあれ?と思う間もなく保養所玄関脇にピタッと停車した巨大魚エイのようなリンカーン。左側運転席からまず下車したのが、テレビドラマ西部警察の渡哲也を彷彿とさす、三つ揃い紺色ペンシルストライプのスーツも颯爽と、ブッダのごときパンチパーマが頭部で黒々と波うち、レイバンのナス型サングラスがバッチシ決まった、どこからどう見ても、紛うかた無き、半グレどころか全グレの渡世人。

このヤーさんが恭しく後部ドア―を開け、直角最敬礼のお辞儀でお迎え、お出ましになったのが如何にも仕立ての良さそうなダブルブレスト高級紳士服に身を包んだ恰幅の良い、昔の俳優、佐分利伸が金縁の眼鏡を掛けたような貫禄十分の紳士。

その光景を見るが早いか隣の同期の男が青い顔して、「アッチャー、えらい会社入ってもた、ヤーコやがな」と、思わず口をついて出たつぶやきが今も忘れられません。

話はこれだけでは終わりません。後続の車でやって来たのは、その社長が熱心に信奉するという、ローカル新興宗教の教祖とその一団。七十~八十年配の白髪色黒の老人を先頭に、お付きの者が二三人ほどおりましたでしょうか、全員和服に袴を身に着けていたような記憶がございます。

その後、研修の教室に使われていた部屋に一同入室。先ずは社長登壇にて有り難い訓示があったのですが、その前の登場シーンの衝撃が大きすぎて、話の内容がまったく頭に入って来ません。

さて、社長の後にスピーチに登場したのが例の教祖様。この教祖様のお話をなんとか覚えているのは、その内容がヤバすぎたせい。

その話たるや、自分の前職はヤクザであり、ある日突然神様の掲示をうけ、神の言葉を伝えるための伝道師としての今の地位にあるといった自己紹介の後、何やら難解な神道系の神様のお話。その後、延々と続くは社長への賛辞。

曰く、「●●社長はあたかも戦国武将、武田信玄同様、その疾きこと風の如く、その徐なること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如し、まことに知略に長けた名将であらせられ・・・・・」などと云うヨイショが延々と続き、もういい加減飽きてきたところで、突然「喝―ツ!!」と教祖様の大声が鳴り響いたのです。

「この中にワシの言葉を真剣に聞いてない者が何人かおる!神のお言葉を聴き取ることのできるワシには、不届き者の心の動きなんぞは手に取るようにわかるのじゃ。しかしワシは敢て咎めることはせん。なぜなればそのような心根の腐った者は自ずと滅びの道を歩むこととなるのが道の道理というもの、ワーッハハハハハハハハハハ!」

さて現在、小生わが身を振り返るに、この教祖様のいう事ひょっとして当たってたのかもなー・・・・・・

研修も無事終わり、各部署に配属された新入社員たち。わたくしも大阪はキタの阪急三番街というショッピングモールにある支店に無事落ち着いたわけであります。しかし気になるのが件のリンカーンとその運転手。就職難の中、折角入社した会社が、今で云うところの反社勢力によるいわゆるフロント企業だったのではないかという疑念がどうしても晴れません。

結局、後日いろんな会社の先輩、取引先に尋ねた結果、その疑念はようやく一掃、反社勢力とは何ら関係のない健全な個人商店だと判明して安堵したのでございます。

ただし、そのレイバン、パンチパーマの運転手だけは例外。その人こそはまさに元暴力団構成員で、当時は社長の運転手兼用心棒として雇われていたホンモノ。実際に接すると、我々下っ端の社員には非常に優しい方だったのですが、人相だけはニカッと笑うと金歯がずらっとむき出しとなる獅子舞いの獅子のよう。東映ヤクザ映画常連のピラニア軍団などはるかに凌ぐ本物の迫力。レイバンのサングラス外した方がさらに怖いというくらいの迫力の顔面凶器だったのです。

なにせ、当時は暴対法などが出来る前の無法の暗黒社会。お店で恐喝紛いのクレーム、いちゃもんをつけるチンピラも少なくはなかったのです。そんな時はこの用心棒のダンナが、社長のお出かけまでの暇な時間を、自室で寛いでいる格好のまんま、すなわちダボシャツ、腹巻。スラックスに雪駄を突っかけて登場、そのクレーマーを優しく諭してくれるのです。

「兄ちゃん、ごねる場所間違ごてえんか、おう?どこのモンやワレ?」

「あっ、いや、ちゃいまんねん。俺はなにも・・・」

「ごちゃごちゃぬかさいでええさかい、店先で目障りや、さっさといんでくれるか、おう?それとも事務所でゆっくり話聞かへてもらおか?」

「へ、へっ、すんまへん、すんまへなんだ、さいなら、すんまへん」

そういう時の、漢を売る商売の本物の胆力というものは、根が臆病者のへなちょこ野郎のわたくしにはまことに頼もしく、憧憬の念を禁じえませんでした。

さあ、そういう本物の漢、兄さんへお奨めいたしたいのがこちらのメンズリング。

どないです、兄さん、昔やったら印台の後光留めたら言う如何にも渡世人です、いう風ないかついデザインが人気あったんですが、今どきそんなん流行りまへん。パンチパーマや角刈りが廃れ、業界でもツーブロックとか結構人気ちゃいますん?それと一緒で漢のリングも今はこないな優雅で洗練されたデザインになってま。

言うても地金はプラチナ900、本チャンの白金。これに18金のラインが規則ただしく指輪を横切り、その真ん中には四枚の花びらのような窪みの真ん中に0.3キャラットのダイヤがおさまって、あたかも代紋のような風情。これをば、まだ無事に残っている指のどれかにはめてもろて、是非とも男っぷりをあげていただけたら思いまんねん。どないですやろ?

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