穏やかな眼差しのキャッツアイ

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モノマネというものはもともと寄席芸の一つで、古くは桜井長一郎さんという方が声帯模写と称し、落語や講談なんかの出し物がかかる演芸場などで、当時の人気役者や政治家などの声色を漫談の中で披露して行くという話芸だったのであります。

声色のマネと申しましても、たいていは決まったセリフを繰り返すだけ。例えば大河内伝次郎という昔の映画俳優のマネの場合は決まって、「オヨヨ、オヨヨ、オヨヨ」。誰でもできるっちゅーねん。それが証拠に知らんうちに三枝のトレードマークになってもとる。イラッシャーイ!

ところがこのモノマネ芸に大きな転換をもたらしたのが、今や芸能界の大御所、ビッグボスとなられたタモリさん。

彼のモノマネ芸というものは、その人物の人格がそっくりそのまま憑依したかの如くで、決まりきった台詞をオウム返しに繰り返す従来の方法ではなく、一つの与えられた状況で、その人物ならどのようなコメントを、どのように発していくかを即興で見せる芸。

その代表的なのが、作家寺山修司のモノマネで、青森県出身の津軽弁の訛りを残す寺山氏の口調そのままに、与えられたテーマについて、いかにも寺山修司らしい思考法、レトリックを駆使して語るといったパフォーマンス。

寺山修司という人は今の若い人には馴染みが薄いかと存じますが、昭和の時代に活躍した劇作家、評論家、歌人と多彩な才能を発揮して活躍なさった方。そういった、いわゆる先生、文化人と呼ばれる人のご多分に漏れず、この方もやたら小難しい話を、小難しい理論に則って語るオヤジだったのです。したがいまして、私のような尋常小学校しか出てない無知蒙昧無学文盲の阿呆にはまるで理解のできない難解キャンディーズなお話を、斜に構えて語るのが一つの特徴。

この特徴をタモリさん的確にとらえ、日常的な事象、例えば、「立ち食いうどんを食う」などといった卑俗なテーマを、寺山ロジックに則り、ご大層にも形而上学的に語るといった、一種のパロディー、高度なお笑い芸を展開されてたのです。

シチュエーション物まねの名人、漫才師、中川家礼二氏の通天閣周辺にたむろする酔っ払いのオッサンのモノマネのネタは、技術的なものは別として、そのモノマネとして語られる内容に関しての知識はさほど準備を要するほどのことはございません。しかしこれが作家、寺山修司ともなるとその即興モノマネを裏付ける知識やボキャブラリーの量も、ご本人に匹敵するほどに重厚なものでないことには、モノマネに信憑性が出ません。しかし、そこはタモさん、本家、寺山先生が早稲田大学教育学部中退の学歴に対して、こちらも早稲田第二文学部西洋哲学科除籍。すなわちインテリによるインテリのおちょくりであったわけで、これが当時のいわゆるインテリ文化人にバカウケし、密室芸などと呼ばれた所以でもあります。つまりある程度以上の知識、センスが無いアホンダラにゃーどーせ分かんねーだろーといった、特権階級意識の琴線に図らずも触れ、タモリの笑いが理解できない奴はイモだ、アホだ、クズだ、ってことになったわけなのです。

さて、この憑依モノマネ芸とも呼べる技は、今の時代にも脈々とその伝統が受け継がれ、ダウンタウンの松ちゃんこと松本人志さんの生き写しのモノマネをするというJPという方の芸風も、まさにご本人が憑依したかのごとくで、そのまんま松ちゃんの代理でテレビ番組のMCまでこなしてしまうというほどの完成度の高さ。

さて、タモリさんの登場は当時の芸能界に多大な影響を及ぼし、末はこのJPさんに続く、類似のパフォーマンスを行う方を数多く輩出する切っ掛けにもなったわけでございます。

たとえばこちらはモノマネではございませんが、市井の人物スケッチとでも呼べる、ひとりの人物像にスポットを当て、そのサマをカルカチュアして、独り芝居で演ずることにより、人間の持つ根源的な滑稽さを浮き彫りにしていくというパフォーマンスを繰り広げる、イッセー尾形さん。この方なんかも、その人物を憑依させ演じながらも、その人物に過度に感情移入することなく、寧ろ突き放した覚めた目で、おちょくり小ばかにしている態度において、タモリさんの芸風に一脈通じるところがあるのではないでしょうか。

また、関西ローカルでひと際異彩を放ったのが、当時キッチュと名乗っていた、松尾貴史氏。この人を最初に見たのは人気アダルト番組、11PMの関西制作版。当時イレブンの司会をやっておられた作家の藤本義一さんのモノマネをなんと御本人の目の前で行い、対談まで行うといったなかなかのチャレンジャー。この方その後も浮き沈みの激しい芸能の世界で今日まで生き残り、現在も俳優、ナレーター、ユーチューバー、カレー店経営、そしてもちろんモノマネタレントとしても大活躍なさっておられます。

さて、この方を最初見た時の印象なのですが、その藤本義一さんのそっくりぶりもさることながら、そのキッチュと名乗る男の異様な目つきに戦慄、恐怖を覚え、一瞬たじろぎテレビ画面から後ずさった記憶がございます。

三白眼というのがございますが、この人のマナコはまさにそれ。漫画や劇画に出て来る悪魔か残虐な悪党のような切れ長の鋭い瞼に縁取らた、白目がほとんどを占める眼球に、針でついたような点のごとき黒目が張り付いているという実に不気味な眼差し。したがいまして、やっていることはお笑いなのですが、その目付きが怖いあまり、面白さが半減するといった、考えてみれば、お笑い芸人としては大変なハンデを背負っておられたわけなのです。

しかし、このハンデをものともせずいまだ芸能の世界で大いに活躍されているのは、老いぼれて三白眼の眼光が衰えた事と、三白眼を欺くオシャレな眼鏡との出会い、そして偏に氏の実力と、日頃の切磋琢磨の賜物によるところでありましょう。

さて、本日ご紹介いたしますのは、キッチュこと松尾貴史さんの鋭い凶眼とは真逆の、瞳があるかないか分からない程のぼやけたキャッツアイのご紹介。

通常キャッツアイといいますと、もちろんはっきりくっきりと縦に伸びた瞳孔がその魅力なのですが、こちら半透明のアクアマリンが露型のカボッションに研磨されました石に、ぼんやりとかすかに浮かぶ光の揺らめきも実はキャッツアイ効果なのでございます。それじゃ値打ちが無いだろうあっさり切り捨てるのは無慈悲、御無体ななされよう。キャッツアイ効果というからいけない訳でありまして、これをムーンストーンのシラー効果と同様のものとお考えいただきましたらいかがでございましょう?石の内部から光の帯がボーっと浮かび上がって、なんとも言えない神秘的な魅力があるとは思いませんか?こういう石をあなた様の白磁の様な胸元に飾って頂きますれば石の魅力も、あなた様の魅力も相乗効果でなお一層蠱惑的なものになるはずでございます。そのぬるい優しさに私はそっと包まれたい。

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