さんごの紅はおなごの血ぃの色え

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考えれば、今からもう四十年も昔になってしまいましたが、DCブランドムーブといって、国内の服飾デザイナーが軒並み自らのオリジナルブランドを立ち上げ、それに当時の若人の人気が集まり、皆こぞってそんなブランドの服を買いあさると言った風潮が生まれたのでございます。

そのようなブランドのお店は、それまでの既存の洋装店のイメージとは大幅に異なり、コンクリート打ちっぱなし風のアートなインテリアの中央に、唐突に宙に浮いた一枚物の板を使ったテーブルが出現し、その上に洋服のコーディネート一式が大胆に陳列されていて、さらにはそのバックには環境音楽などと呼ばれるアンビエントな雰囲気の曲を流すあたかも美術館のような演出。徹底したイメージ戦略に則った販売方法を取っていたのであります。

もちろん接客に当たる売り子も、それまでの無粋な事務員風制服から、自らのブランドのワードローブでかっこよく装い、動くマネキンとしての機能が与えられ、その名もハウスマヌカンなどと呼ばれ一種憧れの職業ともなっておりました。実際そういった風潮を揶揄し、おちょくった、「夜霧のハウスマヌカン」なんて言う歌さえ発売され、そこそこのヒットを記録したことを覚えております。

そう言ったブランドの主だったところと言えば、コムデギャルソン、ケンゾー、イッセーミヤケ、ビギ、タケオキクチ、ニコル、ピンクハウス、ワイズ、コムサデモード、ジュンコシマダ、アーストンボラージュ等々。未だに健在なブランドもあれば消滅してしまったところもあるようで、四十年の時代の趨勢を感ぜずにはおれません。

わたくしも当時は二十代、お姉ちゃんにモテたい盛りの独身チャラ男でしたから、安月給の中からなんとか資金を工面し、こういったブランドの服を購入し、夜な夜な、これもその頃流行りのディスコティークへと繰り出したものでございます。

こういった洋服を身にまとうには、最初はそういったお店の、文化服装学院やモード学院なんかを出たハウスマヌカンのお兄ちゃんやお姉ちゃんに言われるがままに購入に及んでおりましたものが、そのうち自分でもファッション雑誌を購入し色々と研究していくうちに、今度は自らが自分の好みでコーディネートしていきたくなってくるのが人情。

タケオキクチのジャケットにビギのシャツ、メルローズのパンツにチャーチのウィングチップの靴、そしてノックスの中折れ帽。今でこそ帽子を被る人も増えましたが、その頃は皆無に近く、せいぜいが定年退職前後の爺さんくらいでしたからずいぶん奇異な目で見られましたねー。会社の上司には「お前はチンドン屋か?」などと叱責されたものでございます。

さて、頭の先からつま先まで決まったところで、どうもネクタイがなかなか決まらない。いろんなブランドを物色するも、これはと言うものが見つからない。

ネクタイ訪ねて三千里、様々なお店を訪ね歩き、今でいうところのセレクトショップ、確かテイジンメンズショップだったかと思いますが、で出会いましたのがイギリスの女性デザイナー、マーガレット・ハウェルのネクタイ。今のハウエルの商品ラインナップをネットでチェックしてみたところ、現在のネクタイの柄はいかにもイギリスっぽいオーセンティックな柄が多く見受けられるのですが、当時は非常に奇抜というか、まるで着物の柄か、日本画のような和柄が多く、それが実にぶっ飛んだ感じで、いっぺんに気に入り、二三本まとめて購入致しました。

その結果、会社の上役や先輩はおろか、同僚社員からも、お爺さんのを借りてきたのかとか、京都西陣のお土産か、などとからかわれ嘲笑の的。しかしそういったDCブランドのお店のお兄さん、お姉さんたちには大ウケ。「あーっ、ハウエルですかー良いとこ目ぇつけましたねー!」なんてプロから褒められて鼻高々。もちろんそういった柄がDCブランドのお洋服のアートなデザインとの相性が不思議なくらいバッチシ合い、女の子のウケも上々の首尾。

さてそこで今回、ファッションコンシャスはそこそこ高いも、手元不如意で古着しか買えぬ情けない落ち目のわたくしではございますが、昔取った篠塚ならぬ杵柄、お洒落番長とまでは行きませんが、お洒落チンピラ、半グレのわたくしが強くおすすめいたしたいのが、こちらの珊瑚の指輪なのでございます。

およそ凡庸なジュエラーならこういった、櫛笄簪と言った和の伝統と切っても離せぬ珊瑚という宝石材を目にした途端、和の装いに頭が行き、お着物をお召の節には是非なんぞとつまらぬことを言うのでありますが、そんな売りか方こそは自ら墓穴を掘るがごとき愚行。なんとなれば、昨今、お着物をお召になる方など、ほんの一握りの少数派。ほとんどの女性は人生において着物を着る経験は、成人式と結婚式のお色直しのみ。せっかくのこんなに美しい風情のある宝石をそんな狭いカテゴリーに閉じ込めてはあまりにも気の毒、罰が当たるというもの。

さて、こちらダイアが細かく彫留されているリング枠にこじんまり収まっております赤珊瑚の珠。いかにも南天の実のような真っ赤に熟した様子が実に和の風情を漂わせる、魅力的な宝石なのですが、こういったものを唐突に西欧風ファッションの中にイレギュラーに組み込むことによって、装いの中に生まれる予定調和的退屈さをつき崩す、一種料理に用いるスパイスの様な働きが期待できるのでございます。

伝説のジャズピアニストにして偉大なコンポーザーでもあるセロニアス・モンクの演奏スタイルは、初めてそれを耳にした人には不協和音混じりの稚拙な演奏に聴こえかねません。あるいは、伝説のロックギタリスト、ジミ・ヘンドリクスの暴力的な雑音、ノイズとも言える演奏スタイル。この二人の音楽に共通しているものは、見かけ上のイレギュラー、変則的なものの根底にある美しい芸術性なのであります。

それと同様、イレギュラー、異質なものを敢えて自らの装いの中にわずか加えることによって、全体の本質、ファッションコンセプトをより鮮明に浮かびあがらせるというお洒落上級者の必殺ワザ。

ひとつこちらの指輪でお試しになりませんこと?

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