独り細道をとぼとぼと歩いていると、前から歩いてきた人と偶然目があった。すぐに知った人だと認識したのだが、誰だったか思い出せない。向こうもオレの事を知ってるようで、一瞬はっとしたのだが、あちらも同様、オレの事を見知ってはいるが、誰だかはっきりしない模様。
接近するにつれて相手の顔がはっきりしてきて、どうも同年配らしく、白髪交じりの髪の毛と無精ひげが口元を覆っている。多分昔どこかで会った事のある人なのか。お互い老けて、分かりにくくなってるに違いない。でも、どこだ、どこで会った。仕事関係あるいはもっと前の学生時代?思い出せ、思い出せよ、おい!と自分を叱咤しても記憶が蘇らない。そうこうするうちに、とうとうすれ違うところまで来て、もう一度チラッと視線を向けると、向こうも同様で、目が合ってしまった。気まずい、と思う間もなくお互い行き過ぎてしまった。「あーっ、クソー!誰だっけ、絶対知ってるヤツやねんけどなー、アカン思い出されへん」。
「ちょっと」
「良かった!むこうが思い出してくれたんや」と思いこみ、
「はい」と言うが早いか振り返ってみると、案の定、例の男が振り向いてこちらに向かって近づいてくるではないか。
オレは意味のない愛想笑いを浮かべ、彼の来るのを待ちながらも、早くその正体が知りたい気持ちを抑えきれず、うずうずして待っていると、突然彼が言い放った。
「ジブン、オレやんなー?」
「へっ?なんですって?」
「いや、あなたは、私ですよね?」
そ、そーやったんや!こいつはオレや!オレやがな、間違いない!どおりで知ってるわけや!なんや、しょーもな、って、ちゃうちゃう!何でや!何でオレが二人もおるねん!おかしいやろ!ありえへんやろ!いや、まて、ドッペルゲンガーいうの聞いたことあるぞ。この世には自分にそっくりな奴が三人いてるいう話。それや。でも待てよ自分のドッペルゲンガー見た奴は死ぬらしいやんけ、ヤバい!
上記思考が脳裏に一瞬でひらめくと、オレは恐怖のあまり大声で悲鳴を上げた、
「わーっ!!死ぬ―!」
自分の絶叫で目が覚めたオレは、しばらく寝床で茫然自失の体。
「けったいな夢やったなー、なんやったんや? あれ、なんや、もう起きる時間やんけ、けたくそ悪い朝の目覚めやなー」
などと独り言ちながら寝床を出て階下に降りる。珍しく家内がもう起きているらしくキッチンに人影が見えたので、
「今、けったいな夢見て、うなされて跳び起きたんや」と話しながら家内の方へ近づくと
「夢って、こんな夢か?」と言って、家内じゃなくオレがパテーションの陰から不意に現れた。
「わーっ!また出たー!」
言うが早いか動転したオレは、一目散に家から裸足のまま外へ飛びだした。
そこでさらに、信じられない光景を目の当たりにしたのだ。
なんと、外には幾人ものオレが、しかも今起き抜けの、パジャマ姿のオレそっくりそのままの姿かたちのオレどもが、三々五々同じ方角に向かって歩いているではないか。
その光景を目にしたオレは、もう絶叫することも忘れ、茫然と立ち尽くすのみ。
すると、ちょうど横を通り過ぎた一人のオレが不意に声をかけてきた。
「おい、何してんねん?行くぞ」
オレはびっくりして、その声をかけてきたオレに恐る恐る尋ねた。
「えっ、どこへ、何処へ行くんや?」
「バスに乗るんや」
「えっ?バス、バス乗って何処いくんねん?」
「知らんけど、とりあえず行こ」
もちろんオレはオレ自身の誘いを断る事など論理的にもできず、そのままオレの、いやオレたちの歩く方角へ、皆と同様パジャマ姿の夢遊病者のようにとぼとぼと歩みを進めていったのだった。
しばらくして大通りに出ると、大型バスが何台も列をなして駐車していた。
何台目かのバスの乗車口に、一人のこれまた同様のパジャマ姿のオレが立ち、乗車の差配をしていた。きっと奥のバスから順番にオレ達を段取り良く乗車させているのだろう。
「はーい、みんな、やなくてオレ等早よしてやー。このバスはもうじき満員になるからねー、あとのオレはこの前のんに乗って下さーい。乗ったら順番に奥から詰めてってねー、頼んます―」我ながら、何やら気の抜けた声とやる気のない態度。オレってこんな奴やったんかー、こんなんじゃ、そりゃアカンはなーと自嘲しつつバスに乗り込む。
「はい、このバスはこれでお終い。後のオレたちは前のバスに行くからねー」と言いながら、係員風のオレは前のバスに移動して行った。
最後の乗員となったオレは、バス前方の乗車口から乗り込んだ瞬間に思わず息をのみ込んだ。バスの後列から先頭の座席まで、全く一糸乱れぬ同じパジャマ姿のオレ全員がすべての座席を満たし、今最後に乗車してきたオレを見つめるが如く、前方の一点に視線を集中させ、身じろぎひとつせず静止していた。
その時、オレは一種、鳥肌たつような感動を持ってこの光景に目を奪われたのだった。
「なんか、壮観やなー!これだけ姿かたちの同じ人間が規則正しく並んで身動きひとつせんというのは、一種の規則性、連続性の美いうやつや」
「あれ!これって、これって、そうや指輪のパヴェ留めと一緒やん!」
と言う事で今回はギメルのダイアモンドパヴェセッティングリングのご紹介。
さて、むさくるしいパジャマ姿の老人でも、同質のものがある程度の数でまとまって規則正しく配置されますと、かくのごとき壮観な景色となるわけでございますから、これが美しいダイアモンドを規則正しく配置した場合のその荘厳なサマというものは、筆舌に尽くすことができません。
ご覧いただいておりますギメル社製ダイアモンドパヴェリングは、ダイアモンドがトータルで1キャラットとギメルのパヴェシリーズの中でもかなり小ぶりで質素な、気取らない普段使い用に作られた指輪でございましょう。ただ普段使い用と申しましても、さすがギメル、一切の手抜き、妥協はございません。
留められております全てのメレダイアは徹底した製品管理のもとで生産された工業製品かと疑うほどの一貫して相似の無色透明、良好なカット。これだけの良質のダイアモンドが揃うのは、余程力のある海外のダイアモンドサプライヤーからの供給があるのではないでしょうか。その良質なダイアモンドの中から選びに選び抜いて、さらに均質にそろえたダイアモンドをギメル社の至宝、凄腕石留職人の手によって寸分たがわず、引っ掛かりのない見事な甲丸の盛り上がりを、上下左右歪み無くセットされております。
さらに驚くべきは、ダイアモンド自体の品質はまるでコピペしたかのように均質なのですが、ダイアのサイズはリング中央に膨らみを持たせたデザインに合わせて、微妙に中央に向かってそのサイズがグラデーション状に拡大しております。バスの中の私どもに例えるなら中央に席を占める私等が肥満体。前後部および窓際の席を占める私等がや痩せっぽちと言う感じですかね。
えっ、そんなしょうもないもんに例えんでもエエ、せっかくのギメルの値打ちが下がるて?
あほな事言いな、そんな事で値打ちの下がるギメルやないで。見てみ、中古言うてもこの輝き!ギメルの輝きは永遠に不滅です!
掲載ページはこちら → https://item.rakuten.co.jp/douxperenoel/01003315/