ヘビーユーザーは見逃さない平凡で非凡な指輪

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以前にもちらっと書かせて頂いたのですが、お店者(おたなもの)根性と言う言葉がございます。これは何かと申しますと、お店の店員が来店したお客の品定め、値踏みをする、その卑しいありさま、さもしい性根を指している言葉なのでございます。

すべからく、どのようなお店であっても売上向上こそが商売においての最終目的。その為、店員個々人にも月々厳しいノルマが課せられ、その売り上げいかんによって給料の額が変わったり、ボーナス支給に差が出たり、さらには将来の出世にまで大きく影響を及ぼすというからくり。

その為、個々の店員は鵜の目鷹の目で来店客を物色し、購入の可能性の高そうなお客をつかもうと必死なのです。特に高額品を扱う宝石店ともなりますと、一人の客の購入一件でその月の予算達成なんて事もあり得るわけなので、みんな戦々恐々、アフリカのサバンナに生息するハイエナのように貪婪に獲物を物色致すわけであります。

では具体的に宝石店に巣食うハイエナどもはお客のどういった点を観察し、獲物に的を絞っていくのでしょうか。

先ずは、何と言っても身なりの観察。やはり高級品を買ってもらおうというくらいですから、基本富裕層、お金持ちでないといけません。ですからその着けている宝飾品はもとより、服装、時計、履物、コロンの香りから口紅の色、毛染めの毛根の白髪の露出具合、肘膝踵の角質に至るまで、これらを瞬時に観察いたします。老練なハンターともなれば、これはほんの一瞥、あたかも香りをかぐ様に一瞬で嗅ぎ分け、即座に判断が下されます。もしその時点で似非奥様のNG判定が下されますと、まだその辺の判別に疎い新入社員や後輩に親切ごかしに「中野君、ほら良いお客様よ、頑張って行っておいで」などと振って次の獲物を待ちます。

さて、外見上の見かけの次に観察が大切なのが、お客の態度。買い物慣れしていて堂々としているか、あるいは買物が不慣れでドギマギしているかによって、アプローチの仕方はがらっと変わります。

買物慣したスレた方には旧知の知り合いかなんぞのように、礼節をわきまえながらも胸襟を開いた親密さで、おどおどちゃんには優しい看護師や介護職員のような慈母の心で接せねばなりません。間違えて、この反対をすると前者はプライドを傷つけられたように感じて怒り出し、後者は後ずさりして遂には退散と言う望まぬ結果に終わります。

 

さて、その後ですが、何と言ってもマズイのが、「何かお探しですか?」などと不躾に問いただしたりする事。

まさか八百屋じゃあるまいし。

「えーと、ジャガイモ、ニンジン、それに玉ねぎ欲しいんやけど」

「あっ、わかった奥さんち今晩カレーでっしゃろ?」

「ピンポーン!」

 んなアホな。

大体、宝石屋に目的買いで来る人は滅多にいてません。せいぜいが婚礼の一式か、急な葬式用のパールネックレス。前者は見たら一目でわかるし、後者は入ってくるなり向こうから焦って聞いてくる。

一見のお客には先ずは付かず離れず、邪魔にならないように影のように付き添います。そしてなにかの拍子に、今初めて気づいたかのように装いつ、最初から目星をつけておいたお客さんご自慢の持ち物を褒めそやします。

「あら、こちらバーキンじゃございませ?しかも25センチ!なかなかエルメスのお店行っても売ってないらしいですねー、昨日来られたお客様が嘆いておられました」

「そうなのよー、これはね、たまたまワイキキのお店の前を通りがかったら飾ってたので即買いしたのよ」

「エーッ!ハワイでエルメス、おっ洒落―っ!」

「ハワイでエルメスってなんかピンとこないわね。こちらのお財布の方はパリの本店で頂いたんだけどね」

「エルメスは我慢するから、せめてハワイとフランスだけでも行きたいわー!」

「あら、よく仰るわ、オホホホホ!」

これで下ごしらえは完了。あとは気分の上がったお客を自由気ままに店内を回遊させ、

「あら、こちらの指輪変わってるわね」なんて目に留まる商品に行きつくのを待つべし。

 

さて、このお目に留まる品によってもお客のランク、センスが分かるって寸法。

まあ、大体買い物好き、ヘビーユーザーなんて言われるような人ともなると、さすがにセンスの良いものをお選びになる。一見平凡に見えてセンスの良さが光るものに目が留まれば、こりゃもうビンゴ!

さて、そういったよく判っておられる、お買物の手練れ、買い物マニアが如何にも手に取りそうなのがこちらの指輪なのでございます。

ちょっと見は平凡なサファイアとダイアモンドの並んだハーフエタニティー風なデザインで、ジュエリー初心者なら完全スルーの可能性の高い一見地味にも見える指輪。

しかしながら、よくよく見ると、全く同じ形大きさにカットされたダイアモンドとサファイアが交互に組み合わさるようにセットされています。こういった細工を、最初は色姿形照り、全てが異なる天然石で作り上げるという事は想像をはるかに超えて大変な事なのでございます。

いい加減な石の揃えで拵えると、隙間だらけのまだらな印象になっちゃいますからね。

ダイアモンドの方はまあ出来合いのルースの中から根気よく見繕えばなんとかなるでしょうが、この三角のサファイアなんかになりますと地道に探すより、石屋にオーダーかけて拵えさせた方が手っ取り早いほど。指輪ひとつ作るのに材料全部を石から削り出したんじゃないでしょうか?大変手間と根気の掛る作業なのでございます。したがってお値段も・・・

てな事を実際のメーカーの裏事情も知らぬ癖に、推測だけで商品説明するのも宝石販売員の重要な資質。「宝石屋見てきたような嘘を言い」などという古くからの格言もあるくらいですから。

さて、お客さんの方も自分が目に留めた商品が、そのような値打ち物と店員に太鼓判を押されりゃ悪い気はしない。「お客様、さすがお目が高こうございます」という店員のキメの一言で陥落と相成るわけでございます。

まあ、陥落なんて大げさに書きましたが、この様なクラスのお客にとりましては、これしきの買い物はエルメスバーキンを褒めてくれた駄賃、チップの様なもの。あるいは、お客になってあげても良いわよ、あなたもちゃんと心得てるみたいだし、の名刺代わり。実際にはここから、この一見客をもっと大物、ハイジュエリーを買ってもらうような上得意先に育て上げるのが販売員の腕の見せ所。長期的戦略へと移行してまいります。

「じゃあ、サイズ直しはまたこちらに取りに来たら良いのかしら?」

「何をおっしゃいます、またまた御足労をおかけするなど滅相もございません。ご都合の良いご指定の日時にご自宅にお届けにあがります。」

普通の庶民だと、そんなのお忙しいのに悪いからと遠慮するのですが、こういったお客は当然、有名百貨店外商の顧客でもあるので、そんなことは当然と思ってます。ですから、取りに来たら良いのかしらと聞いた時点で、お届けのオファーを当然のごとく期待しております。

「あら、そう悪いわねえ、じゃお願いしようかしら」

はたしてかくの如き成り行きにて、客と店員の腐れ縁が始まるのでございます。

 

 

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