ジプシー奏でる鬼平の指輪

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歳いて老いぼれて参りましたよって、観るテレビも年寄らしもん観ないかん言う事で、最近は休みの日などよくBSなんかで放送されている時代劇の再放送をのんびりと発泡酒片手に観やしてもろてまんのでございます。

特段、時代劇専門チャンネルなんぞを契約する贅沢してるわけやおまへんで、その時々やってるのを適当に観てるだけ。それでも結構な種類の時代劇をこれまで鑑賞することができました。

「水戸黄門」「必殺仕事人」「座頭市」「江戸を斬る」「遠山の金さん」「銭形平次」「暴れん坊将軍」「剣客商売」などなど。その中でもわたくし一番のお気に入りは「鬼平犯科帳」。

この「鬼平犯科帳」、原作が時代小説の巨匠、池波正太郎先生という事もあってか、なかなか並みの時代劇のような、勧善懲悪一辺倒の単純なストーリーやなく、登場人物の人情の機微が細こうに描かれてある。盗人にも三分の理という、人間の弱さの部分にもスポットライトが当てられてたりして、なかなか見ごたえのある人間ドラマという内容になっておりまんねん。

ほんでまた何よりも、このドラマの主人公、鬼平こと、江戸市中火付盗賊改方の長である長谷川平蔵を演じている中村吉右衛門さん。これがまた良ろしいんでございます。

わたしら生来、裏長屋住まいの貧乏人でっさかい、歌舞伎みたいな高尚なもんにはとんとご縁がなく、恥ずかしながら生まれてこの方、歌舞伎の生の舞台なんぞいっぺんたりとも見た事あれしまへんし、わざわざテレビ中継を観るなんてまめなこともしやしまへん。そんなんですよって、人間国宝、中村吉右衛門丈の歌舞伎のお芝居がどんなに凄いかなんぞさっぱり知れしまへんのでっけど、逆にテレビドラマの中での、そのなんともいえぬ所作や目配せによって、何やら歌舞伎の演技の機微に触れる様な気分にさせてくれはるお芝居。なんちゅうたらよろしいんやろん、そう気品がある。それですわ。そりゃ芝居のお上手な役者さんは仰山いてはりますが、この気品いうもんを持ってる方は、あまりそう居てはらへんの違いますやろか。

実はその謎が、このブログを書くにあたってご本人の事を色々インターネットで調べたところ、なんとのう分かったような気ぃになりました。

歌舞伎の世界は梨園なんてことを言いますが、こうした有名な役者の看板を継ぐのは基本世襲制。ひとつの家系が代々その芝居の大名跡を受け継いでいくというわけですな。もちろん吉右衛門さんもそういったお家に生まれはったわけで、実のお兄さんは松たか子さんのお父さん、松本白鴎丈とこれまた大名跡の後継者なのは皆様ご存知のところ。せやけど兄弟やからいうて同じ名前を二人分けて継ぐわけにもいかんと、お母さんの実家、これも歌舞伎の名門、初代中村吉右衛門、つまりお爺さんの養子となりはったんですな。

さて、少年時代の吉右衛門丈、学校の方は暁星高等学校から早稲田の仏文に進みはります。このいかにも東京のエエシの子ぉらしい経歴からして、勉強の方もよう出来はったんやろね。なにせ大学入学当初は歌舞伎役者やのうて、フランス文学の学者を志してはったらしいんですわ。そしてまた絵の方も幼少のころから大層達者で、後年画集を出したり、個展を開いたりとプロはだし。ほんまにご本人自体が文人というかインテリいうんか、そんな点がさっき申しました、演技の気品、品格に現れてんのとちがいますやろか。

さて、皆さんもご承知の通り、中村吉右衛門丈は昨年十一月に七十七歳という、今どきですとまだ若いといわれるようなお歳で、残念ながらご逝去されました。素人目に観ても、歌舞伎界にとっては計り知れない大きな損失やったに相違ございますまい、役者としてだけやなくて、その人物としても。

さあ、その鬼平犯科帳のわたくしにとっての最大の魅力は、実はこんなん言うたらあの世の吉右衛門さんに叱られるやわかりまへんが、実はドラマが終わった後のエンドロール。

ジプシーキングスのインスピレーションという曲をバックに日本の四季折々の江戸情緒を伴った景色が映像として流れまんねけど、これが実に良え!いやホンマ。

ドラマは犯科帳というくらいやさかい、殺人、放火、強盗、裏切り、恨みつらみのどろどろした人間模様が展開されて結末を迎えるわけなのですが、その後味の悪さをあたかも浄化してくれるような、カタルシスの効果がこのエンドロールにはあるんと違いますやろか。

フランスのグループ、ジプシーキングスはテレビコマーシャルでもお馴染みの「ボラーレ」など力強い男性ヴォーカルで日本にも数多くのファンがおられるのですが、この鬼平犯科帳のエンドロールで使われている曲は、歌のないギター演奏のみで構成されたインストロメンタルの楽曲。このフラメンコギターによる哀愁溢れる曲調が驚くほどに、この鬼平犯科帳、日本の時代劇の終焉に見事マッチして良え仕事をしてまんねん。この外国の曲を時代劇のエンドロールに選択した人のセンスたるや、もう神がかってるとしか言いようがないくらい素晴らしおます。まさか吉右衛門丈自身の選曲やないやろね?

さて、この日本情緒とフラメンコギターが醸し出す、えも言えん和洋の融合と見事合致するような佇まいを見せるのが、こちら赤珊瑚の指輪ですんや。

どないです、このまったりした珊瑚の赤。西洋の赤とはまた一味違う、ちょっと陰影を帯びた言いまんのかなー、日本人の詫び寂びの心を反映したような渋い赤。

こんなん指にさしてもろて歌舞伎見物にでもお出ましいただきましたら、またそのお芝居も一層良えもんに映るちゅうもんでございます。芝居がはねたのち劇場表に出たら思わぬ通り雨。雨にけむる都会の夕景色を見るともなく眺めていると、どこからとものう哀愁のフラメンコギターが聴こえてくるかもしれまへんよ。

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