あの頃の自分に持たしてやりたいバイザヤード

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日本人の心のふるさと、観る人の心に郷愁を誘わずにはおかない、全五十作を数える国民的人気映画シリーズ、「男はつらいよ」。渥美清氏が役者人生の大半を費やし、死の直前まで演じきった主人公、車寅次郎は、フーテンの寅と二つ名で呼ばれる旅から旅へのテキヤ稼業のおあにいさん。

実は、かく申すわたくしも、一時期このテキヤ稼業を身過ぎ世過ぎとして暮らしを立てていた渡世人。んな訳きゃないんですが、まるでテキヤさんの如く商品を携え、地方を回り、割り振られたショバで即席の露店を広げて商売をしていたことがございます。

以前勤めておりました、大阪の老舗宝石店がバブルの余勢でもって無茶無謀にも香港に海外出店し、その派遣社員とし不肖わたくしがかの地に遣わされたのは、以前にもご案内のとおり。

派遣直前には最低五年、いや、香港に骨を埋める覚悟でもって行ってこいと発破をかけられ、それが為に肉親と水盃を交わし涙の別れ。それが予期せぬ日本国内のバブル崩壊と、現地での驚くほどの業績不振により、当時の宝石店社長の娘婿でもあった日本人責任者一人を残し、二年で早々と日本に引き戻されたのでございます。

それからがまあ大変。香港異動前は小さいとはいえ、一応支店の店長を任されていたのが、もうどこにも人員の空きがない。唯一担当者が退職予定で空きが出る部署にとりあえず放り込んどけとなったのでございます。

その時の辞令が、本店外商部法人外商課チーフに任ずるというもの。チーフと言うのはその課の責任者で、法人外商の字面からすると実に厳めしくも、ビッグビジネスを動かしている花形部署風に見えますが、つまりこれが、宝石テキヤ稼業の社内の呼び名だったのでございます。

法人課と言うだけあってお得意さんはほぼ会社関係。とは言え取引先の結婚式場のブライダルフェアに出張してのマリッジリング販売とか、ゴルフ場での年間を通しての優勝カップや記念品の納品といったビッグビジネスとは程遠い内容。

そんな中で最大の取引先が、上場企業でもある大手の電材商社。

電材業界と言うと一般の方には馴染薄でしょうが、これは電気製品は扱うも、家電とは異なり、建設や工事と言ったプロが扱う電気機器を供給する商品の流れ。

この電材を一手に扱う大手の商社さんが、年に一度、関西最大の国際展示場、インテックス大阪で、その取引先を日本中から招待して展示会を催すのですが、なんとそこに、お門違いにもわたくしが勤務するその宝石店が長きにわたって、電動工具やボルト、ナットなんかのメーカーと軒を並べて出展していたのでございます。

まあ、そんな会場に来場するのは大体が工務店やら工事店などを経営する社長さんやその関係者が多いので、客層からすれば狙い目なのですが、実は買う方のお客さんにもメリットがあるのでございます。実はそこに出品している商品は全部伝票にて決済されるのですが、もちろんこれはその商取引の流れから「電材」として処理されるわけでございます。

すなわち、お客の社長さんやらが個人で使う高級時計や、奥さんや彼女に贈る宝石類が全て経費で落とせるというカラクリになっているのでございますよ、ご隠居。 

なに、それはまことか弥七!

実際、会場には普段は取り扱いの無いパテックなんかの高級時計も持ち込み、これが結構売れるから笑いが止まらない。確か二日間の開催でウン千万から売れたように記憶しております。

この年に一度のインテックスの展示会なら開催も地元大阪ですし、段取りから販売に至るまで本店外商部が、当時二十名ほどでしたでしょうか、社員総出で当たるので良かったのですが、その後に要らぬおまけがついて来る。

実はこの総合商社の得意先には地方のさらに小さい、それこそ個人の大工さんや、修理店を得意先とする電材業者さんが、仲卸のような形で附随し、流通網を形成しております。そういったところから、その大手商社を通じて、同じような所謂「電材フェア」などと称して行う、得意先の工務店、工事店を招待する自前の展示会への出展依頼が来るのでございます。

依頼と言ったって、そりゃあなた、泣く子と地頭にゃ叶わない。大手商社さんのそのフェアを一切合切仕切っている部長さんから頼まれりゃ嫌とは言えない。嫌なら結構、じゃ来年からは、インテックスにも来なくてもいいから、なんて言われちゃ大変。

ただし、地方の小規模の電材屋さんがやる展示会は規模もそれに比して小規模。会場も地方の体育館や地場産業振興センターならまだマシな方。自社の駐車場なんかに即席のテントなんかを張って野外、露店でやるところまである。まさに露天商。今時分の初春の頃に、一度突然の寒波に見舞われ、凍死寸前の目にあったこともございました。もちろん売上にしても大した数字は見込めず、経費の都合上出張が許されるのは社員二名のみ。この二人、つまり私と相棒で早朝5時くらいからライトバンに商品、備品一式積み込み、現場に向かうわけなのですが、出張先で多かったのが四国方面。当時は明石大橋がまだ開通してなかったので、西宮市の鳴尾浜からフェリーに乗り、一旦淡路島に上陸したのち鳴門大橋を渡り一路四国を目指すわけであります。

大体、そう言った展示会は二日間と決まってまして、展示会前日に乗り込み会場設営をし、翌日、翌々日と展示会をすませたのち、会場撤収とともに即日帰社。会社に戻りゃとうに日付が変わっている。いやー我ながらようやったなー!

さて、その二日間の晩飯はどうするかというと、これが悩みどころ。一応出張手当が僅かばかり出たので、それで晩飯は何とか賄えるのですが、知らぬ土地で、今のようにネットの食べログなんかで調べる事とてできない。しかもトランク一つの寅さんと違い、小規模展示会とは言え、五百から千点ほどの宝石を抱えてるもんだから、これを肌身離さずどこへ行くにも携えて歩かねばいけない。

そこで自ずと行先となるのが、地元の本当は行きたい名物讃岐うどんを供するお店ではなく、餃子の王将!

その理由は安い、ボリュームがある、味にばらつきが無く、一定のクォリティーが期待できる。そして専用駐車場が必ずあるから荷物の移動が楽。この安定感が安心に結び付き、おいらテキヤのお決まりの食堂となったって寸法。二日のうちの少なくとも一日は王将が定石。

それと同じく、お出かけの際のお供のジュエリーとして間違いないのが、こちらティファニバイザヤードネックレス。どんな服装、どんなオケージョンにも合う。しかも見る人が見りゃ一目でティファニーと分かる優れもののデザイン。ほんでもって中古で買うとこんなに安い!こんな商材が当時あったら是非四国ドサ周りにもっていきたかったねー、きっと飛ぶように売れたに違げーねー!

なに?天下のティファニーと王将を一緒にするなって。はばかりながら王将とて天下の王将、売上じゃ引けを取らない上場企業ですぜ旦那、見くびってもらっちゃ困りやす。

何はともあれ、宝飾品でも食べ物でも消費者のニーズに的確に応えた、ウケの良いものが栄えるってのが世の常、人の常。

ちなみに、この電材抜け穴商法、わたくしが宝石屋退社後に、弥七の暗躍か、ご老公のお指図か、国税局のキツーイお咎めにあい、関係者一同、江戸所払い、寄せ場送りの刑に処されたとか。かく申すわたくしも関係者の一人として、間一髪で厳しい国税の取り調べのお白洲を逃れたわけであります。めでたし、めでたし。

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