ハリー中野の宝石コラム

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《シンボルの意味 Butterflies》
 
ジュエリーデザインには花や星などといった人気の定番モチーフがございます。もちろんこれは見た目の可愛らしさや華やかさが何と言っても第一の存在理由なのでございますが、実はそれとは別に深〜い意味があるのでございます。
 
と言うわけで、その辺の深〜良いお話を、それぞれのシンボル毎に順をおってご紹介してまいろうかと存じます。
と言うことで、先ず第一弾は蝶々。
 
 
随分昔の映画の話で恐縮ですが、名作なのでご覧になられた方も多いかと存じます。
ジョナサン・デミ監督の「羊たちの沈黙」という作品。
 
この映画のストーリーのなかで、惨殺された連続殺人事件の被害者の口の中に、蛾のサナギが挿入されているという猟奇的な犯行手口が捜査の上で着目されます。捜査に乗り出したFBIは、餅は餅屋の発想、殺人鬼の事は殺人鬼に聴けとばかりに、ジョディ・フォスター演ずる若い女性捜査官クラリス・スターリングを医療刑務所に囚われているサイコパスの人喰い連続殺人鬼、ハンニバル・レクター博士のもとへ送ります。
このサイコパス犯罪者にして天才的頭脳の持主レクター博士を鬼気迫るパフォーマンスで演じ、見事オスカーを射止めたのが、その頃まだ無名に近かったアンソニー・ホプキンス。
彼の見事な演技によって、この作品が一級のピカレスクロマンとして成功を収めたと言って過言ではございません。
 
映画談義はさておき、そのレクター博士による犯人像のプロファイリングの結果はと言うと
サナギとは蝶への変容の過程であり、犯人自身の現在の状態と、その後きたるべきドラマティックな変化への希求を現わしていると推理します。
実際のところ、犯人のバッファロー・ビルという男はトランスジェンダーの女性変身願望を持つ者であり、女性を襲ってはその皮膚を剥ぎ、自らの身体を覆う女性の生皮ボディースーツを作ろうと考えている、とんでも無い異常者だったのです。
この犯人の蝶に託した願望はもちろんかなり異常でねじ曲がったものでありますが、古来より人間は、醜い毛虫が蛹をへて"空飛ぶ花"とも呼ばれる 蝶となり広い空を自由に飛び回るという、目を見張る様な変容に自身の変化、変身への憧れを重ね合わせてきたのでございます。
この変容への憧憬は身体的、物質的なものから、より内面的、精神的なものへとさらに深化して行きます。
 
古代中国の賢人、荘子の説話として有名な「胡蝶の夢」という話がございます。
蝶になって花から花へ飛び回ている夢を見た荘子が目覚めて想います。果たして自分は蝶になった夢を見たのか、あるいは、今の自分が実は蝶が見ている夢なのではないのかと。
荘子の万物斉同の思想は、ヒンドゥー教のアドヴァイタヴァーダ、不二一元論や旧約聖書の失楽園の挿話、アダムとイヴの物語にも通じるところの、是非善悪の分別を超克したワンネス、自由の境地を説いたものであります。この境地を仏教では悟り、ヒンドゥー教では真我の覚醒、現代のスピリチュアルな教えでは、shift in consciousnessなどと呼ばれ、人類の来るべき次代の進化の姿であると説かれています。
 
卑小な自我に縛られ不安、後悔、怒り、哀しみ、嫉妬、羨望に絶えず苛まれる人間の姿は、正に釈迦が喝破したドゥッカ=苦そのものであります。
皮肉にも、自らの心が作り出すこの惨めな状態、思考の牢獄を打ち破り、小春日和の空を気ままに舞い飛ぶ蝶のような自由の境地を手に入れることこそが、人間の究極的な生きる意味なのだそうです。
 
目を覚ましなさい。耳を澄ませば胸元の蝶がそう語りかけてくるかもしれませんヨ。
 
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By ハリー中野

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