鑑定士 中島の出しゃばり鑑定談

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質業を日々営んでおりますと当然のことながら、いろんな方がいろんな品物をお持ち込みになられます。
そういった品物の中には、たまに目を見張る様な素晴らしい逸品や、いったい何だいこりゃ?なんて肝をつぶすような珍品にお目に掛かる事がございます。
 
このコーナーではそういった質屋ならではの、いかなる数奇な運命を経てか、図らずも当店に辿り着いた逸品、珍品のコレクションの数々を順を追ってご紹介して参ろうかと存じます。
 
 
 
何やらご大層なふた品が続いたので、この辺でひとつ軽いものをご披露致しましょう。
軽いたって、何もつまらないもんじゃないよ。まあ一見つまらない物に見えなくも無いけどね。大抵このての代物は、目の効かない質屋や、宝石の知識なんぞ皆無に等しい買取屋なんかだと中石外して、枠だけ地金のスクラップとして売り飛ばすんだろうけどね。
 
外されて捨てられてしまう運命を運良く逃れたこの石こそは、古来シュメールの時代から宝飾品として尊ばれ、またウルトラマリンという顔料や岩絵の具の原料として珍重されて来た宝石、ラピスラズリ。天平の昔、はるばるシルクロードを渡って日本に辿りついて瑠璃とよばれた。
まあ、じっくりご覧くださいましな、このなんとも言えない深く鮮やかな青。
 
太古の昔には、この石は空から落ちて来た天空のかけらと信じられていたんだそうで、なる程言われりゃ正ににその通り。見る者をすいこんでしましそうな深〜い色だ。
 
色石の魅力はね、なんたってのこの色を愛でるってことに尽きるんですよ。
こんな鮮やかな色が、光の無い、見る者すら居ない地中で出来上がってんだから不思議じゃないですか。
青は藍より出でて藍より青し、なんて諺がありますが、この青は地中より出でて空の色を映すってね、なんか人智を超えた宇宙の神秘、神の領域に触れる想いをもつのはアタシだけなんでしょうかね〜。
 
フェルメールというバロック絵画の巨匠はこの色に惚れ込んじまって、このラピスラズリから作られるウルトラマリンの絵具を駆使し代表作「真珠の耳飾りの少女」をはじめ数々の傑作を世に遺したんです。
 
しかしフェルメールはね、この普通の絵具の百倍もすると言われたウルトラマリンを大量に買い込んでたが為に、死後膨大な借金が遺ったんだとか。半端ない惚れ込みようだね。
 
そう言や、石坂さんはご自分でも絵をお描きになるくらいで、絵画の知識も半端じゃなかったネ。ヘェちゃん今頃どうしてんだろ、寂しいネ~。
 
そんなことはさて置き、このペンダント横19ミリ縦30ミリ。非常にシンプルな創りながら、枠は意外にしっかりしている。持ってみるとずしっとくる。この重みって意外に重要なんです。しっかり拵えている証しだね。
 
こういうタブレット状の半貴石を留める場合、大抵は既成のキャスト枠かエル線と言う金の線で巻いてくのが定石。
でもね、こちらの枠も確かにキャスト枠には違いないが、肉厚の淵に裏張りまできちんと張ってある。こういう創りはねデザイナーものとか企画物と云っててね、きちんと創り込んで、その分付加価値を付けて売ろうって魂胆の造り方。良い仕事してますよ。
だから中に入れるラピスラズリも当然良いもんじゃなきゃいけない。
 
そもそもラピスラズリという宝石はねダイアモンドとかサファイアなんかの単結晶の宝石と異なり、宝石では珍しい複数の鉱物が混じりあった岩石の構造を持つ石なんです。
 
ですから外観の見かけも一様でない。よく金粉がまぎれていると言われる金色の点々は実はパイライトと言う鉱物。白い筋としてよく現れるのはカルサイトと呼ばれる鉱物。この副成分と呼ばれる鉱物がこの宝石にえもいえぬ微妙なニュアンスを与えるんです。
 
さて、ではこちらの石はどうかというと、これが実に素晴らしい。
奥行きの深〜い群青色に疎らに浮かぶカルサイトの滲んだような白、さながら広大な宇宙に漂う星雲のよう。そして一際輝くパイライトの輝きは直近の恒星のきらめきか?まるで宇宙船の金枠の小窓から眺める宇宙のよう。いや、実に壮大な景色だね!
 
でもね、この品物、実はこのまんまじゃ不完全なんです。
 
宝飾品にも二通りあってね、まず完成品そのもので商品の値打ちが完結しちゃってるってやつ。前にご紹介したピクウェのブローチとかバブル時代のブレスレットとかね。もう床の間に飾って置くだけで良いみたいなやつネ。
 
それとは別に最終的に人に着けてもらって初めてその宝飾品としての真価を発揮するっていうものがあり、こちらのペンダントなんかのは正にそちらのクチ。
いくらラピスラズリが美しいとはいえ、このまんまじゃなんか物足りない。
 
このペンダントはね、女性の白く輝く肌の上で初めて真価を発揮するんです。
 
宮崎監督の傑作「天空の城ラピュラ」の中で飛行石のペンダントが少女シータの胸の上で光輝き飛行石としての真価を発揮する様に、このペンダントも然るべきお方がおつけになると、そりゃもう「真珠の耳飾りの少女」が頭に巻いたウルトラマリンのターバンの様に、凄まじいインパクトを見る者に与えるのです。
 
宝石の着け方ってのはね、宝石の美しさを単にその人にプラスオンするんじゃな駄目なんだ。宝石の色や輝きでもって、着ける人が本来持つ隠された魅力を更に引き出すということを考えなきゃいけない。
本物の宝石ってのはね、それ自身が輝くだけじゃなく、着ける人そのものを輝かせるんです。
 
そういう意味じゃジュエリーてのは、ファッションコーディネートの肝だとも言えるね。
 
鑑定士歴五十年 中島贋之助でございました。

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