Breakfast at Tiffany’s

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夜明け間近、まだ薄暗いひと気のないニューヨークの街角。                                       一台のイエローキャブが、都会の喧騒と言うにはまだしばらくの時を要す、寝静まった大都会の大通りに静かに現れ、荘厳な意匠を凝らしたビルの前で一人の華麗な衣装をまとった女性を降ろします。                                          

女性はビルの一角にある大きく設えられたショーウィンドウの前に佇むと、紙袋からパンと飲み物の入った紙コップを取りだし、そのパンをショーケースを眺めながら、おもむろに頬張り始めます。

これは、映画「ティファニーで朝食を」の有名なオープニングシーン。                                   バッグに流れる美しい調べは、この映画の為に書き下ろされ、のちに不朽のスタンダードナンバーとなる、ヘンリー・マンシーニの傑作「ムーンリバー」。そして、このティファニーの軒先で大胆にもパンを頬張る女性を演じた女優こそ誰あろう、永遠の妖精オードリー・ヘップバーンその人なのは言うまでもありませんね。

映画の内容は、オードリー演じる不幸な生い立ちを背負う田舎出身の女性が、巨大都市ニューヨークでの大成功を夢み、金蔓になる大富豪を見つけんと怪しげな人間関係の中で一見、今でいうところのパリピ生活を謳歌している風に装って暮らしています。しかし、実のところは明日の見えない現状ゆえの葛藤によって生じる鬱々たる気持ちを、唯一ティファニーのお店を訪れる事よって解消している心の荒廃を抱えているのです。                         

そんな中、売れない作家ゆえにお金持ちのマダムのヒモとして糊口をしのいでいる男性と偶然知り合い、紆余曲折を経ながらも、最後ハッピーエンドで結ばれるという、まあ他愛ない、典型的なハリウッド式ラブロマンス。

ただし、この映画にはもう一つの側面があるのでございます。                                      それは、壮大に仕掛けられたティファニー社のコマーシャルメッセージ、つまり宣伝広告、プロパガンダ戦略という点でございます。さて、このマーケティング手法、デ・ビアス社のそれの様に綿密に計算された戦略なのか、あるいは有名宝飾店ティファニーを映画の舞台としたため偶然、結果的にそうなってしまったのかは、浅薄なわたくしの知識の及ぶところではございません。しかし、この映画をきっかけに五番街ティファニーがニューヨークの観光名所の一つとなり、ブランドの名声も一段とその地位の向上を見たのは間違いのない事実。

なにせ、冒頭に挙げたオープニングシーンだけで充分、現代においてすらそのままプロモーションフィルムとして使えるような仕上がり。しかも、そのシーンでオードリーが身にまとってるコスチュームはなんと「モードの神童」と呼ばれたフランスの有名ファッションデザイナー、ジバンシーの手によるもの。このドレスはその後「オードリー・ヘップバーンの黒のジバンシードレス」と呼ばれるほどにモードの世界で名声を博したとか。このドレス以外にも劇中にはジバンシーをはじめとする有名デザイナーの作品が衣装としてオードリーの華奢な姿態を包み、映画自体があたかも雑誌ヴォーグを眺めるかのような、お洒落好きにはたまらない趣となっていて、否が応でもティファニーのイメージアップに貢献しているのです。

もちろん宣伝は、このようなお洒落なムードのみの感性に訴えるだけのイメージ広告だけでは終わりません。

こちらもまた映画のワンシーン。大のティファニー好きのオードリー演ずる主人公に連れられてティファニーをカップルで訪れた売れない作家の彼。彼女へのプレゼントに相応しいものは無いかと対応に出たおじさんの店員に聞くのですが、なにせ貧乏文士とて予算は何と10ドル以下で賄えるもの。流石のベテラン店員も頭を抱えて困ってしまいます。ようやく思いついたのが、銀製のティファニーオリジナルの電話のダイヤルを回す棒。今で言うところのノベルティーグッズとでも言うものでしょうか。さすがにこんなものではと思ったのでしょう。青年やおらポケットから指輪を取りだし、この指輪に刻印はしてもらえるのかと問い質します。

一旦指輪を受け取った店員、矯めつ眇めつこの指輪を検分した後、「これは当社の商品ではございませんね」と青年に問うと、お兄ちゃん悪びれる風もなく、お菓子かなにかのオマケの指輪だと告げます。                                        ここで、さすがの慇懃無礼な紳士面した店員も態度が豹変。ついに堪忍袋の緒が切れて「無礼者めが、ここを天下のティファニーと知っての狼藉か?身分をわきまえぬ貧民が言うに事欠いて・・」とでも怒り出すかと思いきや、おじさんにっこり笑って

「こういったご注文はあまりお受けしてないのですが、手前どもは物わかりの良い店でございます故、かしこまりました。お引き受けいたしましょう」とあっさり引き受けてくれるのです。                                               まあ、なんと粋で親切で素晴らしい対応なのでしょう!赤井英和が婆さんおぶって階段昇るより、宣伝効果が上がる事間違いなし!

この映画の世界的大ヒットにより絶大な宣伝効果を得たティファニーではございますが、世の中何事も良い事の裏には難儀が潜むもの。

何が難儀かというと、この映画のあまりの大ヒット故、<ティファニー=オードリー・ヘップバーン>のイメージが固定化され、顧客のニーズも無意識のうちにオードリーのイメージを商品のうちに求める様になってしまったわけでございます。

特にティファニーをニューヨークの観光スポットの一つとして訪れる様な本来のティファニーの顧客層とは大きく隔たりのある一般顧客にウケる商品を開発しなければなりませ。なにせ映画の中で物わかりの良いなんて言っておきながら、いざお店に入ったら目の玉の飛び出る様な、庶民には無縁なハイジュエリーばかり並んでいたのでは、顧客の期待を大きく裏切る事となり、せっかくの赤井英和効果が水の泡。

そこでティファニーもシルバー製のお土産グッズに始まり、いろいろな買回り品をたくさんそろえる羽目になったのでしょうが、中でも秀一なのがこれからご紹介いたすところのバイザヤードペンダントのシリーズ。

こちらはティファニー専属ジュエリーデザイナー、エルサ・ペレッティーの代表作とも言われる商品群なのでございます。

ダイアモンドのペンダントネックレスなのでございますが、そのデザインを極端なまでに無駄をそぎ落とし簡素化し、それによって逆に良質なティファニーのダイアモンドの煌めきを最大限に引き出そうという目論見。この狙いは見事的中し、これ以上ないシンプル&エレガンスな雰囲気を醸し出しているのでございます。

その様子はあたかも映画の中での一場面、着飾らない普段着の姿でギターを爪弾き、自ら映画のテーマ曲、ムーンリバーを歌ったオードリーの様子そのままを表しているよう。

デニムパンツにスウェットシャツのような衣装の中で、美しいダイアモンドはジバンシーの高価なドレスにくるまれているよりも尚一層、強い輝きを発しているように見えるのでございます。

 

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