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ハリー中野の宝石コラム

宝石犯科帳

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宝石店内部で起こる犯罪は、皆様お察しの通り結構頻発する事案なのですが、どの会社も信用を重んじるあまり、滅多に表沙汰にはいたしません。

わたくしが以前お世話になっておりました大阪の老舗宝石店でも、やはり会社内部の人間による商品窃盗事件が時折発生し、その都度、心ある人は大いに憤り、心無い人は、オレも一丁やってこましたろかい、と模倣犯になったり致します。

一番よく起こるのが、ほんの出来心という一瞬の心の迷い。宝石屋に入社しようなんて人はハナから宝石好き、ヒカリモノ好き。まあ、社員割引なんて制度もございますから、ちゃんとした娘さんはきちんとその制度に則ってご自分で、あるいは親御さんに買ってもらったりするんですが、中にはもっと簡便安直に品物を手に入れようという不届き者もちょくちょく出没いたします。

まあ、宝石の魅力に目がくらみ、自分の物欲に負け、窃盗を犯す場合の被害というものは単品の場合が多く、犯人が味をしめて、罪を重ねることが無いかぎりは、被害といたしましてもそれほど大した額になることは無いのですが、大きな損害を会社にもたらすケースが、遊ぶ金欲しさの換金目的の場合。

まあ遊ぶ金と申しましても色々とございまして、タカラヅカに入れ込んだすえ、贔屓のスターにプレゼントをするためだとか、スナックのお姉ちゃんに入れ込んで、頻繁にお店に通う足しにとか、在職中にはいろんな犯罪動機を耳にいたしましたが、中でも一番多いのが博打の軍資金。

世の中様々な商品が流通いたしておりますが、宝飾品ほど目立たず簡単に現金化できる品物はございません。いかに高額なものでもほとんどが掌に収まるコンパクトサイズ。それらをばポケットにそっと忍ばせ質屋へGOとなるわけなのでございます。

なぜ買取屋に行かず質屋に行くかと言えば、盗んだ本人はけっして盗んだつもりはなく、少しの間質屋に預けて融資を受ける、いわゆる質草として「借用している」という意識なのです。

最初から負ける腹積もりで博打を打つなんて人は滅多おりませんから、勝利のあかつきには元本利息ともども借金全額と手土産まで携え質店を訪れ、「世話んなったなー、オッチャンお陰で助かったわ、オオキニ!」などとカッコよく商品を受け出す心積もり。

しかし、昔からの、天網恢恢疎にして漏らさずの例え通り、こういった悪事をはたらいて得た元手の金というものは、まさに悪銭身に付かず、不思議と博打の勝ちには結びつかないようで、負けが込んでくるにつれ質蔵の宝石質草仲間の数も増えてまいります。

普通この質草がある程度溜ってきますと、宝石屋側とて当然行方不明の商品が目立ってくるわけで、「この商品どないなってんねん、あらへんがな」というところから調査は始まり、遂には犯罪が露見するというわけなのです。

ところがこの犯罪を、商品を管理する、店の責任者、店長の立場の人間が行うと、とんでもないことになってしまうのです。

これは実際に私が宝石屋在職中に起こった犯罪のあらましなのですが、

その犯人というのは 某百貨店のテナント店店長、四十代男性、妻子あり。

宝石屋の商品調達というものは、その多くを業者からの委託品で賄っているところが多く、その会社も様々な取引先から色々と品物を借りて商売を行っていたのです。

さて、この店長、自らの責任でもって業者からある程度の売り上げを請け負い、委託販売の名目で借してもらった、ある程度まとまった数の商品のなかから、換金率の高そうな何点かを見繕って質屋に放り込み、まとまった額の融資を引き出し、競馬や競輪、競艇といったギャンブルの元手にしていたのでございます。

当然、商品委託にはひと月とかの期限が設けられており、その期限の末でいったん商品、売上を清算しなければなりません。そんな時には、また別の業者の委託商品を、質屋に入れてる元の商品と差し替えるという寸法。実際この様に質草のローテーションを複数の取引先を利用して行いますと、もう無限地獄、限りなく永遠に、人のふんどしで相撲を取るの例え通り、ヒトの品物で融資を受け続ける事が出来るわけであります。もちろん売り上げが全く無ければ次の委託出品に響きますから、時には実際に売れている品物以外にも質草の中からも売れた体で納品を起こすこともありますが、納品たって自分が支払うわけじゃなく、会社が決済を行うわけですから、本人は痛くも痒くも無い。質草の所有者が業者さんから宝石屋に移行するだけ。

さて、このバレそうもない犯罪が発覚したのは全くの偶然。この店長が不在の時にたまたま店長のデスクを、何かの探し物があって開けた社員が偶然見つけた大量の質札。それをそこに偶然訪れてた支店を統括するマネージャーに見せたのが運の尽き。

そして驚くべきことに、最終的に発覚した被害総額はなんと三億円!

さて、宝飾業界での盗みといえば、こちらも良く見受けられる、デザインの盗用。

だいたい指輪にしろネックレスにしろ、ある程度の決まった大きさのものを、身体の特定の場所に配置し、それがスッと収まりよく馴染み、なおかつ映えるもの、なんて要件を満たして売れるデザイン生み出すなんてことは至難の業。

それやったら売れてる人気のデザインをパクって売ったら手っ取り早いやん、というので国内のメーカーの多くは昔から、海外有名ブランドのデザインを流用して本家よりもリーズナブルな価格で販売するという手法を使ってまいりました。

まあ、パクると言っても完全フルコピーだと法律上具合が悪かろうと、どれも細部を微妙に変えるといった姑息な小技を使い、もちろん安価に売るために石の質を落としたりして、~のデザインにインスパイア―され、などと云った、おためごかしの商品説明を付けて販売するわけなんですが。

さて、宝飾業界において、盗用?剽窃?インスパイア?の最大の被害を被ったデザインが皆様も良くご存知のティファニー社ダイアモンドソリテールリング。ダイアモンドを6本の爪によって捧げ持つようにリング上にセットする、現在でも婚約指輪定番中の定番デザイン。なにせ業界内ではティファニータイプの枠というだけで通るまでになった物真似デザインの王様。この一事をとりましても如何にティファニー社のジュエリーデザインが優れているかがご理解いただけるかと存じます。

さて指輪の場合は、ご案内の6本爪プロングセッティングがもちろん代表作なわけでございますが、それではネックレス部門は何かと申しますと、こちらも皆様ご存知、写真でご案内の通り、世界に名だたるティファニーバイザヤードペンダントであることは周知の事実。

こちらは指輪と異なり、爪でダイアモンドを留める細工ではなく、ダイアモンドの外周にあたるガードル部分のみを金属の線で巻くといった細工で、見た目も非常にすっきりと無駄のないシンプルな仕上がり。もちろんこちらも国内外様々な宝飾品メーカーが数多く類似の商品を製造しているのでございます。ただし、ここまでの綺麗なダイアモンドを使用しているマネっ子は見当たりません。ナニセ、なんつっても本家本元ダイアモンドのティファニーつーくらいですから。本物に勝るものなしホトトギス。なんのこっちゃ?

掲載ページはこちら → https://item.rakuten.co.jp/douxperenoel/11005125/