今でこそ吉本興業所属の芸人諸氏による大挙しての東京進出によって、多少は緩和されたであろうと信じたいのですが、わたくしの若いころは東京の人の関西人、特に大阪人に対する差別意識は凄まじいものがあったらしいのでございます。らしいというのは、実際私自身東京に暮らしたことも無ければ、訪れるのも、せいぜい年に二回ほどの仕入れの機会だけ。ですから、実際にそういったことで被害を被った、いじめにあった、罵倒され唾を吐きかけられ、足蹴にされたうえ土下座を強要された、などと言う事は、個人的には無かったのですが、同じ会社の同僚で東京支店に勤務していた人の話によりますと、実際あからさまな大阪人差別、アパルトヘイト、排斥主義が存在していたらしいのです。
大阪人と言うものは不器用なのか、変にプライドが高いのか、それともアホなのか、他の都道府県の人たちのように上手に標準語を話すことができません。ですから東京に行ってもすぐ関西人の正体が露見してしまいます。もっちゃりした、泥臭い、垢抜けぬ関西弁を話す男が宝石を売ること自体にすでに違和感を持たれるらしく、「あら、あなた大阪の方?なんか訛ってらっしゃるけど」などと嫌悪の表情を隠そうともせず、山の手マダムに言われる事が多々あったそうでございます。そんな時は必ず「いえ、僕四国です、香川県出身なんです。うどんが大好きでーす!」などと言ってごまかすと、「あらそう、なら良いけど、私大阪の人って苦手なの、如何にも強欲で、がめつくて、いい加減で、下品でホント嫌い、虫唾が走るわ」とズバリ言われるそうです。もちろんそんな時は東大阪市出身、バリバリの大阪人、河内の兄ちゃんの彼ですから、大阪人のいい加減ぶりをいかんなく発揮して「ホントですよね、僕も大阪人は大の苦手で、言葉のイントネーションで大阪人に間違われる度に滅入っちゃうし、たこ焼きなんて見ただけで吐き気がします」などとお追従を並べてご機嫌をとったとか。
ただ、その上役である専務さんともなれば、さすが年の功、それを面白がる余裕が出て、こんな話を社員研修でされてました。
「銀座のデパートで靴買おてんけどな、店員にナンボにしてくれるねん、言うたったんや。ほなら最初は分らんかして、ポカンとしとんねん。せやからナンボにまけてくれんねや、言うたらやっと通じたんやけど、わかった途端店員のお姉ちゃん、嫌や―な顔して、お値引きは一切致しておりません、こないぬかしよるんや。あれはアカンな、どうせあかんにしても、もっと客の気持ちを損なわんようにニッコリ笑って、あんじょう断らんと。皆さんもお客様には、断る時が肝心なんで、よう覚えておいてくださいよ」そう諭して下さったのですが、そんないらん事イチビってするから、余計嫌われるんやろね大阪人は。
まあ、実際わたくしなども東京に出張などで訪れた際に、山手線の車内などで同僚と声高に喋っておりますと、気が付くと周りの乗客から氷のように冷たい視線が浴びせられているのを感じた記憶がございます。
さて、これと同じような同民族間の差別をわたくしは30年前、当時勤務しておりました香港の支店で目の当たりにいたしました。
我々日本人からすると香港に住んでいようが上海に住んでいようが、首都北京の市民であろうがみんな一括りで中国人なのですが、当時の香港の人、多分今でもそうかも分かりませんが、自分たちは香港人で、中華人民共和国の国民は大陸人だとはっきり違いを主張しておりました。
当時は今と違い、中国はまだまだ後進国。服装一つとりましても、流石に人民服は卒業してたようですが、しかし実に粗末で時代遅れ。当時はまだ返還前でイギリス市民だった香港の人々には全くの田舎者、後進国の民と映った事でしょう。実際お店の外を中国人の一行が通ったりすると、あからさまに嫌悪の表情を浮かべながら、わーっ、中国人だよダセー、臭せー、などと決まって揶揄しておりました。もしその時わたくしが「自分たちだって中国人だろ?」などと言おうものなら、もう激高して真向否定。「違うよ!私たちは香港人、ホンコンヤン、あの人たちは中国人、大陸人。全然違うよ。喋る言葉から、食べ物、教養、センスその他もろもろすべてが全く違います!一緒にしないで」と叱られたものでございます。
東京の人もこない思てはんねやろかオオサカンの事を。確かに喋る言葉も違うし、食べ物も違うし。一緒にしないでよー!って僕らの知らんところで中国の人に言うてたりして、オモロ。
さて、このように同じ国に暮らす国民の間でも明らかな格差、差別が存在するのでございますが、宝石の場合も、同じ種類の宝石間でも明らかにその産出される場所による格差、値打ちの違いが厳然として存在致します。
本邦ジュエラーのバイブルとして名高い名著、諏訪恭一先生の「宝石」というご本にも色々な宝石の産地による特色とその評価が書かれておりまして、宝石商はもとより一般の宝石マニアやコレクターの方々にも大いに参考となるところなのでございます。
さて、この本でも大きく取り上げられております、人気の宝石エメラルド。やはり最高の産地は皆様もご存知、コロンビアと明記されておりますね。先生の説明によると・・・
“コロンビア産のエメラルドは柔らかな美しいグリーンです。ブルーもしくは、イエローがかかっていますが、純色に近く、彩度を下げるグレイみを感じさせません。コロンビア産のグリーンはクロム元素に起因し、ブラジル産やザンビア産のエメラルドのグリーンはバナジウム元素に起因しており、その違いがグリーンの色味の違いに出てくるのでしょう” と書かれております。
さて、ご覧いただいておりますは、当店オリジナルのおすすめエメラルドリング。正に先生の解説通りの、柔らかな美しさを呈したエメラルドではございませんか?
こちらは権威あるGIAの鑑別書が証明いたします、正真正銘のコロンビア産エメラルドを中石に据え、両サイドに贅沢に0.5キャラットアップのEカラー、VVS2のダイアモンドを一個づつ配置した実に豪華な作りとなっております。このエメラルドの特徴は何といってもこの鮮やかな色の冴え。朝日を浴びた若葉の様な、実に新鮮なグリーンを呈し、それが光りを反射し、きらびやかに輝いているのがお分かりいただけるでしょうか?
さて、石の拡大写真を良くご覧いただきます、とテーブルの中心部分より少し外れた位置に内包物が確認できますね。宝石に不案内の方ですと、これをキズと見なし、マイナスポイントと考えがちですが、本来が内包物の大変多い宝石のエメラルド。目につくインクルージョンはこれぐらいしかございませんと言った表現こそが妥当かと存じます。なにせこのインクルージョンこそがコロンビア産エメラルドを証明する識別特徴、三相インクルージョンなのですから。さしずめ、高貴な身分を示す勲章みたいなものと御理解いただければよろしいかと存じます。
さあ、このようなノーブルなジュエリーをお着けになれば、あなたも明日から東京山の手婦人おほほほほほほほの高笑い、たとえナニワのオカンでも。知らんけど
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