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ハリー中野の宝石コラム

真夏のホラーの一席

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夏の風物詩と申しますと昔から西瓜にかき氷、ビールに枝豆、浴衣に風鈴、花火に蚊遣と相場は決まっております。

ただ最近は季節感が薄れてきたとかで、そういった風情を愛でる、楽しむてな風流はとんと下火だそうで。

 

もののけ、幽霊 妖怪のたぐいなども、昔から夏場の流行りモノと相場は決まっているようでございまして、扇風機やクーラーなんてものが無かった時分に、ぞーっと胆の冷える恐ろしい気分を味わって涼を取ろうなんて言う、庶民の苦し紛れの工夫がそもそもの始まりだそうでございます。

 

さて、普段は陽気なお笑いが売り物の寄席ではございますが、夏場ともなりますと笑ってばかりじゃ汗が噴き出てたまらない。少しはお笑いの合間に涼を取る工夫をしなければ、という事で、普段は毎度ばかばかしいお笑いの一席を演じる噺家さんが、身の毛もよだつおどろおどろしい怪談噺を演じるという事にあいなったのはそういう事情があればこそ。

 

さて、落語の怪談噺を語る上で、いの一番に挙げなければいけないのが三遊亭圓朝という江戸明治の時代に活躍した名人の誉も高い大師匠。

名人上手と呼ばれる噺家数あれど、この人の上手さは頭抜けて凄く、その凄さゆえに先輩後輩同僚はおろか自らの師匠からすら疎まれ、嫉妬をかい、陰湿ないじめを被ったというのでございます。

どのような、いじめかと申しますと、この人の得意な演目を本人の出番が回ってくるまでに他の噺家が先を越して演ってしまうという嫌がらせ。普通は寄席内の暗黙の了解があって演者それぞれが遠慮し合って上手く回していくところをわざと意地悪をして得意の出し物を封じてしまおうという魂胆。しかも自らの師匠が率先してするのだからたまったものではございません。

 

しかしこれでへこたれる様なヤワな圓朝ではございません。それじゃあ他の噺家が先回りのしようの無い、自分にしか演じることの出来ないオリジナルの噺をこさえて演ってやろうじゃないかてんで作った話の数々が、これまた後世に残る名作揃い。

中でも代表作の一つと言われる「真景累ヶ淵 (しんけいかさねがふち) 」は全九十七章からなる超大作。とてもいっぺんに語ることなどできない大河ドラマ顔負けの一大スペクタクル。

内容とて落語とは名ばかりのシリアスな人間の欲と業の絡み合い。またその末に生じた殺生沙汰によって殺された者の怨念が亡霊となって祟り、更にはこれが子々孫々まで続く因縁因果となり、陰惨な物語が螺旋の如く繰り返えされるという。まさに背筋も凍る怪談噺の傑作なのでございます。

このお話があまりによく出来ているという事で、後年映画になったり、歌舞伎になったりと大層な人気を博したわけでございます。

残念ながら、三遊亭圓朝師匠のオリジナルの高座の音源は昔の事とて、現存いたしませんが、その孫弟子あるいはひ孫になるのか定かではございませんが、昭和の名人と言われた三遊亭圓生師匠がこの「真景累ヶ淵」を得意の演目としており、現在も在りし日の名人圓生の話芸の粋をYouTubeなどでお楽しみいただけます。

ご興味のあるお方は是非そちらの方で。

 

とまあここまで引っ張っておいての今回は宝石、宝飾品の中のオバケの話。

わたくしがまだ宝石店に勤務いたしておりましたバブル前からバブル期にかけて、日本中はまるで熱に浮かされてるかのように好景気に浮かれ騒ぎ、もう毎日がお祭り騒ぎ、年中ブラジルのサンバカーニバルの様な体。

不動産価格はずっと右肩上がりで、地上げ屋などといわれる胡散臭い連中が暗躍し、

普通の主婦ですら株取引に手を染め、ひと月で何百万儲けたなんて話はざら。

どの企業も業績絶好調につき決算賞与に海外社員旅行と、もうどちら様も大層な大盤振る舞い。

さて、そんな時によく売れたのが宝石のオバケ。

オバケたって、なにも指輪に卒塔婆がたって人魂が青白くその上を浮遊しているわけじゃございません。平たく言えば大きさ重視品質軽視のジュエリーなわけであります。

分かりやすい例えでダイアモンドを例にあげれば、DカラーVVSIの透明度、エクセレントのカットグレードの0.5カラットのダイアモンドよりも、Mカラー、I2の内包物どっさりのカットがプアーで3カラットの大きな方が断然人気。

「そんなもんな、石の良し悪しなんか素人には解らへんねんて、なんせ大きさやて。ガツーンとはったりかませるようなん嵌めてやんと舐められんで、ほんま!」とまあそんな如何にも、あぶく銭をつかんだ、にわか成金的風潮が世間一般に広がり、オバケ宝石の需要は高まったのでございます。

先ほどは分かり良いようにダイアモンドを例に挙げましたが、実際のオバケ宝石の主流は色石でありました。ダイアモンドはどうしても鑑定書というものが付いてまいりますので、そこを突かれるとマズイわけなのでございますが、色石はそんなややこしいものは無い。

20,30,40キャラットを優に越える、灰色不透明なスターサファイアや赤かぶの様な色の不透明なインドスタールビー、ラッカーで着色したような不透明で濁ったヒスイ、内包物だらけのまるでストーンウォッシュ加工かと見まがいようなエメラルド。

そんなデカいだけで何の美しさも魅力も感じられぬオバケ宝石がよく売れてたのでございますが、果たしてみんないったいどこに行ったのでしょう。オバケだけに無事な成仏を願わずにはおれません。

品質重視の当店におきましては、あいにくオバケの見本になる様な手ごろな商品がございません。

そこで、お化け同様滅多にお目にかかる事の出来ない幻の希少石を良い意味でのオバケという事でここにご紹介いたしとう存じます。

 

さて、こちらのグランディディエライトという舌を噛みそうな宝石名の石、実はわたくしもまったく知らなかった宝石なのでございます。実際わたくしが宝石屋に勤務しておりました頃は商品として流通すらしていなかった。バブル紳士淑女がどうあがいたって手に入れる事すらできなかった、まるでオバケのように存在すら不確かな宝石なのでございます。

実際この宝石が最初に発見されたのは1902年ということなのですが、このような透明の宝石品質の結晶が発見されたのは今世紀初頭のこと。

なにせ、かの世界的な経済誌「フォーブス」にレッドダイア、ターフェアイトについで世界で3番目に高価な宝石と評価されたそうでございます。

いかがでございましょう、この清涼感あるマリンブルーの輝き。まさにこの夏の季節にピッタリなクールなイメージ。しかも誰もこの石の正体を見抜ける人がいないという怪奇現象を引き起こす実にミステリアスな宝石。

 

「あら、素敵なアクアマリン」

「いえ、アクアマリンじゃないの」

「ブルートパーズ?」

「ブー!」

「じゃ何?教えて」

「オバケ」

 

商品掲載ページはこちら → https://item.rakuten.co.jp/douxperenoel/01002639/